ちょこっと日々のこと

今まで生きてきた私の中にあるもの

ロッキーと母の通夜と彼女の笑顔

今東京で暮らしている同級生。

中学1年のクラスで一緒になり

映画の趣味が同じで仲良くなった。


引っ込み思案でおとなしかった私に比べ

彼女はゴムまりみたいに元気で

いつも明るくてクラスの人気者だった。


高校は別々になったけど

手紙のやりとりを続けていた。

小さな私の町の映画館に『ロッキー』が来て

彼女と二人で観に行った。


今みたいにフカフカじゃない椅子。

映画が進むうち

いつの間にか拳を握りしめて

スクリーンの中のロッキーに心の中で叫んでいた。

床を強く踏みしめていた。


高校1年の冬、私の母が亡くなった。


通夜が始まる前のザワザワした時間

誰かに呼ばれて出ると

玄関に制服姿の彼女が立っていた。


彼女は私をまっすぐに見つめて

ニコッと笑って

「またロッキーみたいな映画見に行こう!」

と言った。

余計なことは言わなかった。


あのときの彼女の笑顔が忘れられない。

思い出すと泣きそうになる。


誰のお悔やみの言葉よりも嬉しかった。

ずっと後になって話したとき

彼女は何と言ったか覚えてないと笑ったけど

私は一生忘れない。


なかなか会うことは出来ないけれど

今も彼女は親友だ。



1976年 アメリカ