ちょこっと日々のこと

今まで生きてきた私の中にあるもの

おばちゃんの家

子供の頃、おばちゃん(母の姉)の家に泊まりに行くのが好きだった。

子供が居なかったので、私をよく可愛がってくれた。


両親が食堂と喫茶店をしていた頃

伯母は店の手伝いをしてくれていて、よく私を連れて帰ってくれた。


伯母の夫は画家だった。

貧乏だったけれど、一応「画家」という生業で生計を立てていた。

子供に絵を教えたりもしていて

私も習った覚えがある。


せまい路地を入った所に

昔の長屋のように家がくっついて並んでいて

ガラガラと木戸を開けた先の左には水屋

お茶の間を通って奥の部屋

狭いけれど縁側があり、当時は珍しい寝そべる木のチェアが置いてあった。

草木が好きだった伯母の庭が見えて

手前には小さな鉢がいくつもあった。

夏は庭の戸を開けて蚊帳を吊った中で寝た。

小さな家だったので

目をつぶると中の様子が全部見えてくる。

(時々夢に出てくることもある)


ミシミシと音を立てて階段を昇ると

絵を描いていた伯父さんのアトリエ。

油絵も日本画も描いていたので

おびただしい数の絵の具と美術雑誌。

奥の部屋には骨董好きだった伯父さんの部屋。

刀や鎧があって怖かったなあ。


家の中は少し薄暗くて

夏でもひんやり涼しかったように思う。

庭先の風鈴が時々鳴っていて

私は木のチェアに寝そべって

ウトウトするのが好きだった。

お昼によくおばちゃんが作ってくれた

ソース味のヤキメシも好きだった。


もうとっくに伯母も伯父も居ないし

あの家もないのだけれど

またあの家にお泊まりに行きたい。